渓 流 随 想 (四)

黒川、木曽路の岩魚

新宿から木曽福島まで急行で1.880円そんなに安か
ったのか。
前夜23:45発アルプス8号、塩尻の乗り換えで2時間
も待たされたらしく7:45に木曽福島着。

     予想以上に大きな木曾駒

1976年7月15日
黒川上流へのバス停を探しているうちにバスが出てし
まったので歩き出す、1時間も待てないもの。
向こうからなぜか馬がパッカ・パッカと引かれてくる「流
石木曾だ」、なにが「さすが」か定かでないが真近で見
る馬はそうとうに大きかった。

背中のリュック(当時はそう言った)にはアユ用の地下
足袋とテンカラ竿、首に下げた新品のペンタックスME
は世界最小・最軽量。
テンカラ竿「硅竹」も3.3mのグラス製で、仕舞いが30
cmと短かいからリュックを背負っての電車・バス利用
には携帯に便利だった。
但し、もっぱら餌釣りである。

川原に車を止めバックドアを空けたまま二人が釣りを
していたが岩魚ヤマメにしては下流過ぎる、と思いそ
のまま上流を目指して歩く・あるく・アルク。
西洞川と分かれた所から入渓するもまったくアタリ無し、
通りかかった地元のおじさんに「岩魚はおるけんど素人
にはつれんじゃろう」と言われた。

     岩魚はもっと上流だろ

支流の上小川に入ってやっとアタリがあって餌のギジ
が取られた、一変に体内の血が巡りだし鼓動が早くな
る。
小さな落ち込みに再度キジを投入するも、又取られる。
ふと見るとブッシュにクモがいたので捕まえる、これが
正解で釣れてきたのは20cm弱のヤマメ、いや赤い斑
点をちりばめた初めてのアマゴだ。
この辺はアマゴなんだと初めて気付く。

その後は又さっぱりアタリ無く、西洞川合流点まで戻り
途中で見つけた黒川荘に宿をとる。
一泊2.600円は安いねー、宿の主人が言うには「ここ
らの岩魚はめったなこんじゃ釣れんでッしょう」
なにやら木曾の岩魚は特別らしい。

     今日のねぐらは黒川荘

朝起きてみるとすでに明るくなっていた、再度上流を目
指す気力も体力も無く釣り下る事にする。
昨日、釣り人二人がやっていた場所にきて「アタリ!」
と合わせたが上がってきたのはアブラッパヤ。

次は木製の小さな橋の下に淵があり、のぞくとアブラハ
ヤにまじり良型のアマゴがたくさん泳いでいる。しかした
まに掛るのはハヤばかりで何とかアマゴを、と遊んでい
る所へ監視員さまコンニチハ。
お金を払いながら「岩魚はいないですか?」と聞いてみ
ると、アゴを上流に向け「おるおる、こっから上行ったら
ようけおる」

そこで昨日は釣れなかったと言ったなら、「おるにはおる
がめったなこんじゃ釣れんかもしれん」くらいに言われち
ゃうんだろうナー。

釣れてよし 釣れなくてよし 汽車の旅

            
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