渓 流 随 想 (三十二)

漆沢、夕日沢の長い夜

漆沢は宮城県鳴瀬川の上流にある。
最初に行ったのは82年7月29日、仙台の知人から
好漁の上に
尺岩魚を釣ったと言うニュースに釣られ
て?
すぐに駆けつけたが、先ずは坊主に終わった。
釣られた直後では釣れないのが当然ではある。


しかしそれから89年まで毎年のように出かけるお気
に入り
の渓となり、86年には朝日沢で初の尺岩魚を
手にする事が出来た。

養魚場出現?
96年9月、四年ぶりの漆沢ダム。ダムは両側に林道
が付いているが、進行左側の方が道が良いと言う事
で何時も左側を使っていた。
この日は工事中で初めて右側からダムを迂回する事
に成ったのだが・・・。

漆沢ダム
漆沢ダム

バックウオーター付近の道路脇で何やら工事中だ、本
流に架かる橋の
手前で渓沿いに入るとすぐの所に真
新しい養魚場が出来ているではないか。

車を止める場所も無い、あまりの変わり様に驚いてし
まって悲しくってそのまま引き返してしまったのだった。


翌97年6月
何とかして漆沢上流へ入りたいと、直接入る迂回路を
探しに行く。隣の川の林道からの迂回路を見つけ、や
っと降り口に繋がる車止めに着いた時はすでに昼を過
ぎていた。
小さな沢沿いにどんどん下りる、小沢は藪に消えたが
とにかく降りる。かなりの藪こぎにめげず、ようやく降り
立った渓が夕日沢で有る事に間違いは無い。

本命の朝日沢は明日の予定とし、今日はここで釣る。
3時を回って釣れたのは二匹だけだった。
ゴミが多く場荒れしているが、早めに引き上げて明日
の朝日沢に備えよう。

夕日沢のイワナ

しかし下りるのと違い道の無い藪の中、車に戻れる
かどうか心配だった。
とにかく左から来る小沢を登れば踏み跡が見つかる
だろうと歩き出したが、登りがだんだんきつくなり足
が痛くなってくる。

かなり登ったが案の定踏跡は見つからず諦めて戻る
しかない、下りは更にきつく両膝がきしむ。
しばらく休んで少し歩く・又休む・・・、
やっと出会いまで戻ったが夜が迫っていた。

ここで朝を待つしかない、無理をして怪我でもしたら
一大事と大木の下にしゃがみ込み、両足をマッサー
ジしながら明日に備えた。

カッパを着込んでも渓の夜は寒く、つい時計を何度も
見るが何時も30分以上進んでいることがない。
「こんな時、熊でも出たら」一瞬よぎった思いに強く首
を振った、林道の車止めで私を待つ愛車CR-Vが恋
しい・・・長い夜だ。

暮れる渓流

るくなるのを待ちかねて歩き始めたのが4時、何と
か車にたどり着くのに4時間も掛かってしまった。

翌98年にパソコンを購入、早速インターネットで渓流
関係を見て回る内に 「菊池工房、宮城県の渓流」
を見つける。


鳴瀬川水系が詳しく紹介されていたが漆沢の養魚場
が出てこないのだ、私はその養魚場の為に夕日沢へ
迷い込んだのだから。
質問をさせてもらったところ、こともなげに「養魚場は
隣の唐府沢です」との返信。

・・・、私の勘違いだった。
養魚場が新しかった事、久しぶりだった事。
さらに初めてダム右側を回った為に
先に出会う唐府沢
をうっかりし、「漆沢に養魚場」と思いこんでしまったの
だ。

         (修正03 3/11)

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