渓 流 随 想 (三十)

奥只見高石沢、ヤマメとイワナと泥棒と

恋ノ岐には幾度も通ったがいかにも遠い、タコには近い。
(冗談を言っているばあいではない)

そこで御池から峠を越えてすぐの只見川支流を探索するこ
とにした。
1996年
8月7日前夜に出発、この年の六月にも恋ノ岐狙いで出か
けたのだが、只見本流の船着場が通行止めだった。
未だに通行止めの可能性もあるし未知の渓もよかろうと、
峠を下りきらない内の脇を流れるトクサ沢の調査に当たる
事に。
カーブ付近に設けてある待避場所の脇に、他の車の邪魔
にならない駐車スペースがあったのでCRVを止める。
藪を掻き分けて渓に出たが沢が小さく、砂が多くて見込み
は薄いと判断した。

        写真が無いので絵でかんべん

隣に高石沢がありそれに入るためには一旦下って本流か
ら登る、地図でもこちらの方が水量多く期待が持てそうに
思えた。
谷が浅いので日が差すから明るく、以外に渓相も良い。

最初はチビイワナをリリースしたが少し上ると0cm弱のヤ
マメが三匹釣れた、いずれも落ち込みの白泡脇だ。
上流ではやはり20cm程度だがイワナを二匹、初めての渓
でこれは嬉しい大漁だ。
型には不満足だがヤマメとイワナ両方が釣れると嬉しくなっ
てしまう、豊かな自然に出会えたような気がしてしまう。

釣り場の選択がうまくいったので、とても良い気分で引き上
げる。車に戻り釣り支度をとく、バカ長を使ったから履物を
変えてベストを脱げば完了だ。
グローブボックスから財布とタバコを出してポケットへ、桧枝
岐でそばを食べてから帰る事にする。

走り出して何かしら何時もと違う音がする、気になる風切音
が聞こえ、左を振り向くと後ろドアの三角ウインドが割れて
いた。

       ここを割られていた

車が跳ねた小石が当ったのだろうかと考えながらそのまま
走らせ、桧枝岐のやなぎやでとにかくざるそばをズルズル。

まだ気が付いていないのである、車上荒らしなど思いもよ
らなかったのだ。
800円也をお払いしようと財布を開けるとお札が無い、一緒
に入っていた免許証やクレジットカードはそのままだが二万
円以上入っていたはずの札だけが無い。
釣りをしている間にガラスを割り現金だけを盗む、なんと卑
劣な奴が居たものだ。

普通は退避場所に止めても車の往来があるからそう被害
に遭うことは無いと思うが、この時は図のようなスペースに
車を入れた。
長時間止める事になると思い、他車の邪魔にならない良い
スペースだと思ってしまったのだ。

       こうゆう場所へは止めない事

そこが奴らの思う壺、釣り人が止めた車の前に奴らが車
を止めれば他の通行者からは見えなくなる。ちょっとした
気使いが仇になってしまった。
やなぎやさんには訳を話し、免許証とガラスの割れた車を
見せて代金をあとで送らせてもらう事にした。舘岩村で派
出所に届けようとしたがあいにく誰も居ない、暫く待ったが
誰も来ない。

ヤマメとイワナに遇えた喜びなど何処へやら、悔しいやる
せない気持ちで帰るしかなかった。
 
記2000 12/28

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