渓 流 随 想 (十三)

美し過ぎる鹿留川

1975年 8/1
いきなり岩手の安家川で渓流デビューを果たし、さて
関東の脂ビレ”類はいかにと出かけてみた。伊豆の船
原川でハヤ、栃木の黒川ではヤマベ、関東ではそうは
簡単に釣れるものではないらしい。

1ヶ月後の9月4日
釣り雑誌の中から鹿留川を選ぶと、そこは川と道の線
が描かれているだけの空白地帯、町や村を示す文字
は見当たらない。
きっとこんな所に隠れているに違いない、と・ひとりうな
ずくのでありました。

        

その割には出発が9時、東桂で12時半、入り口のバス
停砂原に14時着。
日に3本しかないバスの最終時刻を確かめて歩きはじ
める。川に出てみて驚いた、こんなにも綺麗な川がある
ものかと、これが「渓流なのだ」と見とれてしまった。
手を浸してみると予想道理の冷たさ、川虫も住みにくい
のだろう石裏に極小さいのが1匹だけだ。

渓相がまた素晴らしく、まさにこれぞ「渓流」であった。
こんな所でもしも釣れたら・・・、しかし超初心者が関東
初の脂ビレ”を追うには初めから無理な時間割になって
いた。

その後、「烏川」で金色の岩魚、「大倉川」でヤマメの宝
庫、イワナが泳いどる「小蛇尾川」を経験。

        

翌年は早々と3月12日 羨望の鹿留川に再度訪れた、
少しは経験も積んだんだぞィ。
しかしあえなくアタリなく玉砕万歳でした、とぼとぼ・トボ
と林道を歩いていると上から車がきて乗せてくれた。
思い返すとあの頃は本当に良く車に乗せてもらっている、
歩きの釣り人には親切なのだ、釣れていなければなお
の事。

           

あの時の宮下の志村さん、有難う御座いました。
「六月になれば上流でイワナが出る、支流の大沢は滑
が多いがヤマメがおる」と教えてくれましたがロッジと管
理釣り場が出来たと聞き、雑誌にも紹介されて挑戦の
気が湧かなくなってしまいました。

あの美しい渓流にあの頃の血を引くイワナは居るのだろ
うか、もう一度訪れたい今だ羨望の鹿留川。
そう、放流などの情報は知らないままに。

            
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