渓 流 随 想 (十一)

春のうららの来光川

1977年
渓流3年目の春四月三日は桜満開の伊豆半島の根元、
熱海と三島の間に函南町を流れる来光川。
当時はまだ釣り雑誌を頼りにイワナ・ヤマメの釣り場情
報を探していた。

「暖かい伊豆方面」・「駅から歩いて入渓」・「小渓だが穴
場?」季節がらと初心者らしく「身のほどをわきまえた選
択」だ。
・・・車も免許ないし。

       桜満開の函南駅

朝は寒かったものの函南駅で降りると沢山の桜が咲い
て風も無く、良い御天気のつり日和になっていた。
日曜だったらしく渓のそばで遊ぶ子供の脇をすり抜けて
上流へ歩く、流れは小さいが確かに渓流らしい音を立て
ていた。

       ちょっと通してね

前日までの雨で少し濁っていたがスニーカーを履いたまま
で釣りあがる、それにしてもこんな小さな小川を有名な釣
り雑誌が紹介するのはいかがなものか?。
この事も渓流情報に疑念をいだく要因になった。

しかし好天に恵まれて可愛い渓流を歩けば、釣れても釣れ
なくても、どちらでも好いような気分。
一度のアタリも無いまま進むと、トロ場になり道は竹やぶ
に入った。竹やぶが終わるころ小さな落ち込みがあるのを
見つけ、ひょっとしたらと静かに近ずいた。

        竹林の向こうにポイント

流芯の泡が消えるあたりにキジを降り込み、静かに流す・
・・・。
もう一度・・・、流れは少し濁っている。
もう一度・・・、・・・ピクピク。
グ−ンと言いたいところだがク−ンと引いて上がったのは
ヤマメちゃん、カーイーね。

        かーいいヤマメ

更に上流へ向かったが流れが細くなり、藪に隠れるように
なったところで納竿。
初めから大きな期待があった訳でもないので口笛吹き々
鼻歌交じりで引き返す、満開の桜に見送られてガラガラに
空いている電車に乗りこんだ。
二度と訪れる事は無いでしょう。

        美味しくいただきました

釣りの締めくくりは釣った魚をいただくこと(当時)。
小型一尾でおかずにはなりませんでしたが、ご馳走さまで
した。

             
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