渓 流 随 想 (十四)

奥只見の大岩魚

花占いってやった事ありますか、確か花びらを一枚ずつ取
って行くのですが。

それに似たことを渓流のポイントでやりました。と言っても
占いではなく
釣友二人でポイントを交互に攻めるのですが、
その結末はいかに。

-     [奥只見ダムを見下ろす]
      奥只見、恋ノ岐付近(参考写真)

檜枝岐までは幾度か釣行したが1993年6/8、いよいよ奥
只見へ踏み込む事になった、いよいよです。
釣りをはじめた頃からのあこがれの地、「今は昔の面影な
く」とは聞くものの、そこは銀山湖と呼ばれていた頃からの
大岩魚の聖地。
もしかしたら、と言う期待が心の隅にありました。

今回も情報収集はせず地図を広げてなんとなく二人の意
見が一致した湖の支流
を釣る事に決定、早朝の美しい筑
波山の稜線を右手に先ずは車を北上させる。
矢板、塩原、田島、桧枝岐を経由して奥只見の林道に入
りこむまで
約五時間のドライブでした。

-       [朝焼けの筑波山]
            朝焼けの筑波山

林道を登り支沢との合流点に付くと車が二台止まっていた、
川の様子を見ながら何処でやるか相談している所へ上流
から
FFマンが戻って来たので声を掛けると「滝までいった
がチビイワナの
ライズが二回だけ、本流側へは二人で入渓
している」との事。

仕方なく、少し戻って下流から攻める事にした。

二人で釣るには渓が狭いのでポイントごとに交代で竿を出
す事にした、「釣る・釣らない・
釣る・釣らない」である。
この時に恋人を待つ乙女が「来る・来ない・来る・・・」
と花び
らを一枚ずつ外すシーンを思い出したのだ、オジサンなの
に。

順番だから何時もより丁寧に探った。乙女のごとく、花びら
外す様にていねいに探った二人のオジサンのどちらに
後の花びらが「釣れた!」と出るのやら。


どちらかが釣れたら「釣れない方が釣れるまでポイントをゆ
ずろう」
などとも考えたが、そんな必要も無くきちんとポイント
を交代して釣りあがる。

なにしろアタリも何んにも無いのだから。

もう少しでさっきの合流点に付く頃淵の壁際をゆっくり流れ
る目印がピタリと止まった。

竿を少し上げてみるが動かない、根掛かり?・・アタリだ!
こんな時は大物だ、さほどのファイトは無いのだがタモに
るかどうか心配するほどの大岩魚は悠然としている。


下流に回りこんでやっと取り込んだが魚体の三分の一近く
もタモからはみ出ていた、尾ビレも見事だ。
口元を見ると釣
鉤は唇の皮一枚を貫通しており、
だから痛みも無く暴れず
に取り込めたのだ。

見事な魚体 38〜39cm

     [タバコと比較した大岩魚]
         タバコと比較した大岩魚

この光景のレポーターが私釣ったのは釣友。花びらの最後
の一枚が微笑んだのは彼だったのです。
エッ、「とっくに感付いていた」・・・そうでしょうね。
それにしても、もう一枚花びらが有ったら、
順番がちがったらナァ。

             
随想記メニュー