随想(二十五)、黒部川黒薙

立山黒部アルペンルート

88年10月
山好きのM君から「何時も岩魚を追って谷底ばかり徘徊
しているでしょうから、たまには山へ行きませんか」、と
誘われて新宿で待ち合わせた。
こちらは30分チョイでアルプス広場に付いたがあちらは
静岡から来るのである、釣りにしろ山にしろ対象は何で
有れ好きな事への情熱と言うか執念と言うか、たいした
ものです。

       誰もいない山を登る
        ぽつんと見える「バンザイ」がM君

          室堂付近

黒部ダムから室堂へ向かう満員のロープウエーを 途中
で降りる事にするとこれが正解で、先ほど迄 の喧騒が
嘘のような静寂に包まれた。
ご覧のようにダーレも居ないのじゃ、いい気分でし た。
まるで我が庭でも有るかのように、それこそ我が物顔で
のトレッキングでした。
但しもう一人が女の子ならネー 、お互い様じゃィ。

たしか弥陀ヶ原で一泊、翌日は称名の滝、富山から宇
奈月温泉という「M君におまかせルート」は順調に推移
した。もっともこれは「おきまりコース」なのだから。

     雨の称名の滝

そしていよいよ黒部川を登るトロッコ電車である、これ
が今回のクライマックスだかんね!。
4時、雨が降っていた。

「登り電車は終了しました」・・・ガーン
*おまかせ・おきまりコース*はここで遇えなく断絶した
のだ。

M君が言う事に「黒薙温泉まではたいした事無いから
歩きましょう」、おいおい雨の中 線路脇を歩くのなんざ、
たいした事が無い訳が無い。
カッパを取り出すM君を後ろに 駅員室へ行き「温泉に
予約しているのだが」と相談する、貨物車両は動いて
いるようだ。

聞いてみるもんですOKです、次ぎの貨物車両に搭乗
許可がおりたのです。 おかげでたった二人きりの「特
別専用車」と相成りおおはしゃぎで乗り込んだのでした。

    乗せてもらった貨物トロッコ

黒部の支流黒薙川の川岸に温泉宿があって私には初
めての露天風呂を、そうとう楽しみにしていた。見ると川
岸を削った窪みにセメンを流しただけ、湯も普通のホー
スで引いただけ。
ま・露天風呂にはちげーねー。

宿の人が言うには何年か前に関西の釣り人が黒薙に
入り石油缶に相当の岩魚を詰め込んで宅配したのだと
か。
釣り竿・持って来てねえー

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