渓 流 随 想 (二十一)

西野川、 木曽路の岩魚−U

1984年
木曾黒川で惨敗を喫したのはこの九年前、渓流釣り二年
目の事(随想15)、「ここらの岩魚はめったなこんじゃ釣れ
んでッしょう」と軽ーくあしらわれた気がしている。
しかし前年の83年は鳴瀬川で27cm木ノ根沢で29cm
(随想33)、型部沢の26cmと良型岩魚をものにして少し
は腕が上がったのではないだろうか。
(偶然やッチューネン)

その頃は仕事に追われた事とスキ−を始めた事もあって
釣行回数が少く、84年(S59年)はなんと三度しか記録
されていない。
木曽路のリベンジは開田高原西野川が標的に選ばれた。
定休の木曜の一日だけで決着を付けねばならず、よって
夜討ち朝駆けの強行軍を命じたのだった。
(誰が誰に命じたんだ/*)

       星の流れに身を占って

中央道をひた走り真夜中に開田高原着、見上げずとも空
は満点の星にて夕べのごときほどにありける。
(オット又変な口調になりける/*)
あまり綺麗なのでカメラを取り出しシャッターをバルブにし
て写してみた、星の軌道の小刻みなギザギザはシャッター
を押さえてる指の震えに他ならず。/*
真夏とはいえ高原の夜明けは肌寒く白々と共に目が覚め
た、今「夜討ち朝駆け」決行の期は熟したのだ。
(・・・/*)

    
      車を止めた高原の廃屋(アナ画をデジ亀)07109

林道はすぐ行き止まりになりそこで支度を整える、いまだ
車も第一村人も発見していない。
バカ長を履いてまだ日の当らぬ渓を歩き出すと流れの冷
たさがゴムを通してくる、意外なほどに冷たいのは明け方
のせいだろうか。
全く当りすら無く一時間が過ぎた、それでも程よい水量とゴ
ーロの渓流を行く。

大き目の石に囲まれた深みを見つけた、とは言っても小場
所だからと惰性のままに仕掛を落とす。
ピッと当りがあってそのまま流れた鉤を上げるとふやけた
川虫は簡単に取られていた。後ずさりしてオニチョロを探し
そのまま鉤に付けて同じポイントの同じ所へ投餌する、コツ
ッとしてピッと合わせれば反動で獲物が飛び上がる。
しかし20cmに満たないイワナでリベンジ決着とは成らず、
程よい流れを探りながらさらに先を行く。

      木曽路のイワナ2

とうに日が差して暑くなっていたが、相変わらず冷たい流れ
はバカ長を通してくる。
せり出したブッシュの下に複雑な流線がぶつかる瀬の頭へ
投餌する、そして1m下のたるみで軽く合わせればビン!と
して二十cm強が竿をしならせた。

それでもまだリベンしジ決着とはいくまいが腹が減った、先
ほど食べたお握りはボロボロで中真しか食べられなかった。
夕べ買った兵糧(ひょうろう)は朝のパンと乾いた握りで底
をついたのだ、で戦意も底をついたのだ。
リベンジはこれにて勘弁してしんぜよう、あっさり気前良く引
き上げよう、戻るにはただ歩いても一時間以上は歩かずば
なるまい。

      アコード1600FE、本田さん何かクデー

相変わらず冷たい流れを下流へ歩く、そうだこの西野川の
支流は冷(つめた)川と言う名なのだと感心し、納得しつつ
愛車を目指す。

そう・思いでの車、初めて買った新車は1600ccなのに、下
から二番目のグレードなのにクルーズコントロール装備(そ
れも140kmまで設定)でお気に入りmy-carになったアコー
ドFEであった。
愛車に戻ってほっと一息、さてまだ日は高いが帰りましょう、
「木曽路はすべて山の中」帰り道は遠いのです。

記2001 2/11

               
随想記メニュー